脳の中の過程−−解剖の眼 養老孟司 著
脳は、計算を実行する状況を物質過程として自ら創り出す。こうして脳が生成した世界は局所的意味論を成す。限定された世界(計算)とその外部(実行環境)を同時に扱うことで、自己言及とフレーム問題とを俎上にのせて両者を無効にする。これが、クオリア、数の認知、視覚サヴァンの知覚、粘菌計算機等の具体的検討をへて導かれる、現象論的計算だ。
定価1995円 (本体1900円+税5%) 293頁 B6変型 ISBN4-88679-103-4 C1040
生成する生命 生命理論T 郡司ペギオー幸夫 著
自己言及を構成する部分と、全体と、そしてフレーム問題が示唆する世界性、の三項関係を認めること。しかし、生成を解読するためには、二項関係と媒介者、の形式を採用しなければならない。ドゥルーズを手がかりに進められる生成の解読における新たな展回とは、計算、モデル、実験つまり科学装置の相対化を内包した科学装置、の提案に他ならない。
私の意識とは何か−−生命理論 II 郡司ペギオー幸夫 著
生命の形式 同一性と時間 池田清彦 著
代謝、免疫、遺伝、発生、進化など、生命はすべての局面で時間と共に変化する。 しかも自ら生成する生命は、変化する自らを常に確定し同一性を保つ。ヒトは、とはつまりヒトの脳はそのような生命を非生物から直感的に分かつ。あるいは種の同一性を見誤ることはない。同一性の存在論と認識論を検討し、時間の生成の謎を解き生命システムの原理に迫る。
「私」はなぜ存在するか 脳・免疫・ゲノム 多田富雄+中村桂子+養老孟司 著 [文庫版解説=檜垣立哉]
脳の自我と免疫の自己とゲノムの私とはどのように相即するか。刻々変りながらかつ持続する私とは何か。常にたった一個の細胞から自らを創出する生命システムである「自己」の真実に迫り、生物の学への個の回復を説く。今最もアクチュアルな、哲学する科学者三人が、時代の核をなすべき「生命のリアリティー」を摘出して、新たな思想の原理を象る。
生命の文法 〈情報学〉と〈生きること〉 養老孟司+中村桂子 著 叢書生命の哲学1
生命の学は「生きる」ということを探求する。ここに普遍性が見えてくる。一方「生きもの」は生物の多様性を語る。「こと」と「もの」の交点に生物は在る。全く同じ遺伝暗号=言葉で書かれていながら、ネズミの眼の遺伝子をハエに入れると、複眼を作る。「こと」の世界の背後にある、この文法とは何か。システム、個体、情報、同一性などを手がかりにこの文法を解き明かす。
エロティシズムの歴史 呪われた部分−普遍経済論の試み ジョルジュ・バタイユ 著 湯浅博雄+中地義和 訳 [文庫版解説=吉本隆明]
エロティシズムとは、否定と回帰、禁止と侵犯という二重の運動の総体のことだ。精神と尊厳と秩薯Eを動物的貧欲に対置すること、つまり自然を禁止することによって〈人間〉が生成した。恥ずべき肉体と性と死(=殺人)の禁止。しかし欲望が、禁じられたもの=聖なるものを呼び返す。禁止と侵犯の同時性。流布版『エロティシズム』の原典、87年刊の改訂新版。
サッカー狂い 時間・球体・ゴール 細川周平 著 [文庫版解説=今福龍太]
球体は始原の運動、渦巻く力の界面であり、出来事を生成する。サッカーの時間とは収縮した持続、浮遊する線、アイオンだ。そしてゴールという巨大な時間の停止。ボールは嵩高な作用だけを許す。世界で最も美しいスポーツ、競技の王様、人を狂わせる事件、サッカー。これはサッカーに狂った著者によってサッカーそのものにさせられてしまった書物。89年刊の再刊。
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