墓の彫刻 死にたち向かった精神の様態 エルウィン・パノフスキー 著 若桑みどり+森田義之+森雅彦 訳
人類にとって最も普遍的な体験である死にたち向かって人々はどのような形象を生み出してきたか。エジプトは死後の世界を信じ、ギリシアは故人の過去を想い、ローマは救済への願望と故人の地上的名誉を共に求め、中世は腐敗した肉と完璧な故人像を一つの墓に表現し、バロックは死に行く瞬間を永遠化する。図像解釈学の完成者パノフスキーの代表作。
〈象徴(シンボル)形式〉としての遠近法 エルウィン・パノフスキー 著 木田元 監訳
遠近法は精神的生理的空間を数学的空間に変換する。実体を現象に変え、人間の意識を神的なものの容器にまで拡げる。消失点の発見は、「無限」の発見のシンボルであった。事物が固有の価値をもつ古代の空間が、ひとつの連続体となり、再び物体が解放される過程、つまり古代神権政治の終わりと近代人間政治の始まりを印す二つの遠近法に挟まれた精神史の劇。
光彩の絵画 ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画の図像解釈学的研究 若桑みどり 著
一六世紀初頭、ヘルメスやカバラやプラトンへの憧れ、普遍的な歴史への欲求、旧約の事件に新約を読む予型論の復活、等が渦巻く。改革派サヴォナローラの処刑からいまだ十年、ルターとミケランジェロはごく近くに居た。時代精神と切り結ぶ芸術家の深奥の理念を解読し、数度にわたる修復現場調査を基に、天井画の構造を明かし、登場人物を同定する。
音楽のことば 2 モーツァルト、ベートーヴェンほか サム・モーガンスターン 著 海老澤敏 監修/近藤譲 監訳
聴く悦びを読む愉しみに結ぶ「音楽のことば」全9巻の第一回配本。手紙、楽譜の前書き、契約書、献辞など、作曲家の書き遺した文章を選んで編集し、生年順に配列。この巻にはルソー、C.P.E.バッハ、グルック、ハイドン、ブレトリー、モーツァルト、ベートーヴェン、シュポーア、ヴェーバー、ロッシーニ、シューベルト、ドニゼッティを収める。
音楽のことば 3 シューマン、ショパンほか サム・モーガンスターン 著 海老澤敏 監修/近藤譲 監訳
真の音楽に較べると、言葉はなんと曖昧で誤解されやすいか、とメンデルスゾーンは言う。ベルリオーズは、楽器法がいかに作曲家の楽想の貧困を覆い隠しているかを指摘する。シューマンは、諸君、帽子を取りたまえ、天才だ、とショパンを評したが、この二人にグリンカを加えて、一八〇三年から一〇年までに生まれた作曲家五人を、この巻には収めている。
音楽のことば 7 マーラー、ドビュッシーほか サム・モーガンスターン 著 海老澤敏 監修/近藤譲 監訳
いつでも神秘は残されている、創った人間にとっても、とマーラーは書く。感情や知識の表現を、音楽という象徴的な言語に翻訳することが作曲なのだ(シュトラウス)。音楽は、色彩とリズムから作りあげられる(ドビュッシー)。この巻には、ヴォルフ、マーラー、マクダウェル、ディリアス、ドビュッシー、シュトラウス、デュカス、ブソーニを収める。
ブラヴォー・ゼバスティアン バッハの生涯の10の場面 アンドレーア・フローヴァ 著 鈴木昭裕 訳
十五歳のゼバスティアンは、一七〇〇年三月リューネブルクに向かう。聖ミカエル教会学校に入るためだ。五〇年七月妻アンナ・マグダレーナの腕の中で息をひきとるまでの、バッハの生涯の十の場面が、彼の音楽と信仰と愛を鮮やかに描き出す。フランツ・オットカー・バッハの手稿に想を得、史料を精査して、文化史的な視点から再構築されたバッハ像だ。
れんげ草だより――八ヶ岳の暮らしと子育て記 日達れんげ 著
「いのち」が「いんげん」や「にわとり」や「僕」に生成する瞬間の輝きをとらえ、八ヶ岳の自然と人々のハビトゥスが溶け合う様が描かれ、そこに諏訪の神話の古層が露頭したりもする。海外で評価の高い女性作家の初の「きりえ作品集」。永遠に属す「線」は瞬間の表象である陰影までも内包し、エイコン、ファンタスマ論を呑む表現の可能性を拓く。
Copyright (C) TETSUGAKUSHOBO Co.,Ltd. All rights reserved.