善の研究――実在と自己 西田幾多郎・香山リカ 著
西田は常に新しい解読を促し、その度に鮮烈に発光する。生、生成、行為、無など哲学の先端を賦活し続ける西田に、現代精神病理学の刃が触れる刹那、実在と自己をめぐる垂直の問いが今日の「私」の状況を切り裂く。能動知性intellectus actu 5として刊行された本書がここに転生する。解題、脚注、語彙の展開を示す矢印などがテクストを生気づける。
〈象徴形式〉としての遠近法 E・パノフスキー 著 木田元 監訳
柱がたわんで見えないよう、ふくらみ=エンタシスをほどこす。湾曲した網膜像がもたらす球面遠近法が古代を支配する。遠近法は空間の認識、神と世界と私の関係の秩序であった。主観的な仮象を生むとしてプラトンこれを退けたが、遠近法は「絵画の舵」(レオナルド)であり、無限を所産的自然に変え、カントによって形式化される空間を準備するのだ。
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