『善の研究――実在と自己』
西田幾多郎・香山リカ 著
西田は常に新しい解読を促し、その度に鮮烈に発光する。生、生成、行為、無など哲学の先端を賦活し続ける西田に、現代精神病理学の刃が触れる刹那、実在と自己をめぐる垂直の問いが今日の「私」の状況を切り裂く。能動知性intellectus actu 5として刊行された本書がここに転生する。解題、脚注、語彙の展開を示す矢印などがテクストを生気づける。
実在の根底の 無限の運動。 自己がこれを 統一する。 今日、 私は、 私という自明性 を束ねきれない? 西田哲学の 初発の力動が 沸騰する。
1870(明治3)年石川県に生まれる。第四高等中学から帝国大学文化大学(東大文学部)哲学科予科に進む。後に京都帝国大学助教授から教授に。人類の哲学の営みの最も豊かに生命的な脈流を継いで、優れて今日的な問題系を切り開く。45年、鎌倉に76歳で逝去。
1960(昭和35)年北海道に生まれる。東京医科大学を卒業。精神科医で、帝塚山大学教授。人の生つまり「こころ−からだ」がそこに展開する社会と文化を射貫く眼差しをもって、乖離性障害などの病理を明らかにし、現代人の「自己」や「私」のあり方を問う。
その内面に「よるべなさ」を抱えた新しい「私」の行く末を、私たちは見守って行くしかないのである。(香山リカ)
ベルクソン、ドゥルーズと西田を響き合わせた、檜垣立哉『西田幾多郎の生命哲学』(講談社現代新書)など気鋭の西田論が次々と生まれています。西田はけっして読みにくくありません。特に本書には、テクストを保存しながら様々な工夫が凝らされています。西田は現代哲学です。
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