『脳の中の過程――解剖の眼』 (哲学文庫biblioteca philosophica8)
養老孟司 著
養老孟司退官後、東京大学医学部から「解剖学」が消えた。アリストテレスからレオナルドやヴェサリウスを経て現代に至る2千年の解剖学の歴史の最後を見届けて養老孟司は脳科学に向う。なぜか? 本書は養老孟司の脳内の事件を証言し、国民的思想家誕生の秘密を明かす。鋭く強靭な思考、無辺の学殖、豊かな言語感覚に織り上げられて、解剖学の終りが煌く。
解剖学は、 その歴史の終わりに、 大きく花開いた。 そんな解剖学の凄みが、 この本には 散りばめられている。
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脳の生理学、 解剖学の本来の意図は、 人文諸科学の意図に等しい。
1937年鎌倉に生まれる。東京大学医学部を卒業の後、同大学医学部解剖学教授を務め、95年に退官。同大学名誉教授。比較解剖学、脳科学、人間学から、科学の哲学、文学までを覆う思惟がおのずから形を成した著書の数は無慮百数十に及ぶ。
養老孟司といえば「脳の人」である。しかし実際は、養老先生の考えは反=脳である。……「脳より大切なものがある」と書かれているのが分かる。その大切なものとは、身体とか自然である。
しばらく品切れでしたが、哲学文庫版が出来ました。『バカの壁』や『死の壁』としてその一部が噴出する、養老孟司の思考のマグマの全体を計測できる書物です。
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