ルソー『化学教程』翻訳プロジェクト
『化学教程』は、一言で言えば、ルソーによる「化学の教科書」である。これを意外だと思う人も多いであろう。というのも、ルソーに対する私たちのイメージは、学問や都会的生を批判し、素朴な未開人を愛し、人民主権を打ち立てた人であり、あるいは反対に、自らの子供を孤児院の前に置き去りにする冷酷な思想家であり、または性的倒錯者というイメージを私たちはルソーに対して抱いている。そして、一番有名なルソー像は、「自然に帰れ」というルソーであろう(実際に、このようなことをルソー自身は述べていないし、彼の思想においてもこの言葉は間違っている)。
そのようないわゆる「非理系」的ルソー像を払拭するかのような作品がこの『化学教程』なのである。当時、化学は最先端の学問、技術であった。時代の最先端に位置するこの学問をルソーは大学の講義に出席したり、実際に実験をおこなったりして学んでいた。そして、その学びをルソーは1206枚の膨大な手稿にまとめた。だが、この手稿は出版されることはなかった。それが『化学教程』である。
(第一回「ルソーは化学にどのような夢を見たか?」[淵田仁]より)
目次
- 第一回「ルソーは化学にどのような夢を見たか?」淵田仁
- 第二回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第一章 物質の原質について
- 第三回『化学教程』第一部第二編 自然的な器具instrumentについて 第一章 自然の仕掛けmécanismeについて
- 第四回『化学教程』第一部第二編 自然的な器具instrumentについて 第一章 自然の仕掛けmécanismeについて(続)
- 第五回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第二章 物体の混合と構成について
- 第六回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第一章 物質の原質について(続き)
- 第七回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第一章 物質の原質について(続き)
- 第八回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第一章 物質の原質について(続き)
- 第九回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第一章 物質の原質について(続き)
- 第十回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第一章 物質の原質について(続き)
- 第十一回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第一章 物質の原質について(続き)
- 第十二回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第三章 物体の凝着原理と物体の透明原理について
- 第十三回『化学教程』第一部第一編 物体の諸要素とそれらの構成について 第四章 自然の多様な混合物と構成物について
- 第十四回『化学教程』第一部第二編 自然的な器具instrumentについて 第二章 火について
- 第十五回『化学教程』第一部第二編 自然的な器具instrumentについて 第二章 火について(続き)