「信じるがゆえに真である」。5人のアジテーター、法然、パウロ、道元、三島由紀夫、ハイデガーを駆り立てた〈無なる神〉の力こそ叛乱なのだ。デビュー作『叛乱論』(初版1968年)から始まった思想家がたどりついた最終地点は「他力という力」の発見であった。政治の根源とその危うさを開示する、近年再評価著しい長崎思想の総決算。
他力という力――叛乱論終章
長崎浩
¥3,200 (税別)
2024年12月5日取次搬入予定
- 刊行年月:2024年12月
- 46判並製256頁
- 縦188mm×横125mm×束幅19mm
- 重量310g
- 本体価格3,200円
- ISBN:978-4-86503-197-3 C0010
目次
はじめに
絶対他力 パウロ
1 アジテーター・パウロ
他力に追い立てられて
信と信仰の分かれ目
他力の根源へ
無である神
2 神の信、イエスの信
呪われた死、贖罪
仲介者キリスト・イエス
復活のイエス
霊の到来
3 他力思想の非情
罪の国のわれら
神の国は近づいた
贖罪信仰
神の子を身代金に
神は無力無関心
キリスト教信仰へ
弥陀からの光 法然
1 称名念仏の選択
阿弥陀仏の本願成就
立宗立党のマニフェスト
顕密仏教体制に抗して
法然浄土教の党派性
2 大願成就の無条件の信頼
衆生救済は決定済み
臨終正念・諸仏来迎は僻事
絶対の阿弥陀仏
念仏行者のつとめ
3 信の解放
不可視の光に照らされて
超越と内在
護国仏教体制のほころび
法然教団の形成
4 念仏衆の乱
信のタガを外す
信のアナーキー
七箇条制誡
政治の三角関係
興福寺奏状 新宗を立つるの失
新像を図する失
国を挙げて源空一門を糾弾せよ
流刑
仏性の時 道元
1 万草の花咲く仏性世界
青年僧
大疑団
存在論としての正法眼蔵
仏性という他力
2 語るということ
破格の文体
ぎこちなく、見苦しく
この日本国の文体
3 存在者の存在は仏性
悉有はすなわち仏性
仏性は経歴し現前する
無の現前
無に形を刻む
4 有時から仏性へ
ある時としての今
遍満する今の時
仏性の現成
大いなる歓喜
5 無常美観から仏性へ
無常文化
武者の世の到来
無常から仏性へ
語句は念慮を透脱する
6 仏性の開け
風に風鈴が鳴る
天も水も岸もみな舟の時節
虚空に咲く華
有時かならず花果あり
青山常運歩、石女夜生児
虚無の形 三島由紀夫――平野啓一郎『三島由紀夫論』によせて
1 『金閣寺』、観念的青春小説
同時代者、三島由紀夫
自意識の劇、絶対の探求
虚無としての金閣
潔癖な肉
虚無とニヒリズム
最後の旅
2 『鏡子の家』、みんな欠伸をしていた
一九六〇年という分かれ目
生きようとしないで生きる
ヨーロッパのニヒリズム
鬱勃と能動的ニヒリズム
虚無の開示
虚無に咲く花
文化の虚無とニヒリズム
詩の生まれる場所
3 『英霊の声』、などてすめらぎは人間(ひと)となりたまひし
起死回生の作
そんなお方、もともとあらしゃらなかったのでは
六八年の世界革命
楯の會の六八年叛乱
4 『豊饒の海』、実に実に実に不快
祖国防衛隊構想
楯の會結成
政治も文学も
実に実に実に不快
能動的ニヒリズム ハイデガー ――轟孝夫『ハイデガーの哲学』によせて
1 事件としてのハイデガー
研究と爆弾
四つの論点
2 『存在と時間』は人生論か
世間への頽落
死への先駆的覚悟
決意し行動せよ
世界の無へ臨む
ハイデガー哲学の政治的含意?
3 神は死んだ、ヨーロッパのニヒリズム
存在の性起 神を人間に譲渡する
能動的ニヒリズム
ヨーロッパの歴史の根本的運動
4 技術への問いとマルクスの形而上学
近代技術と労働
労働の形而上学
技術的労働の疎外
歩く人
5 反乱の憤激、一九三三
存在の問いの政治的含意
闘争共同体の火花
下品で不愉快な連中
憤激の憤激
大学のナチ化
6 アナクロナチズムの理念
農本的小共同体
疎外論革命
テクネ―としての労働
超政治という反政治
まとめ
あとがきに代えて――真は信だと、アジテーターは語りかける
1 フーコーの哲学
真理の政治史
私の哲学
語る、聞く、記述する
言表の真と信
2 アジテーターの遍歴史
真理の政治史へ
真=信の遍歴史
深い革命
アジテーター五人衆
長崎浩(ながさき・ひろし)
1937年生まれ。1960年、東京大学理学部卒業。大学院数物系中退。63年から70年まで、東京大学物性研究所助手。以降、東北大学医学部、東京都老人総合研究所、東北文化学園大学に勤務。第一次共産主義者同盟で活動、東大全共闘運動に助手共闘として参加。主な著書に、『叛乱論』(合同出版、1968年)、『結社と技術』(情況出版、1971年)、『政治の現象学あるいはアジテーターの遍歴史』(田畑書店、1977年;世界書院、2019年)、『超国家主義の政治倫理』(田畑書店、1977年)、『叛乱を解放する』(月曜社、2021年)、『中江兆民と自由民権運動』(月曜社、2023年)、『叛乱論/結社と技術[増補改訂新版]』(航思社、2024年)など。