自由民権運動は革命の経験だった。「東洋のルソー」兆民は実際ルソーをどう読み民権運動に関わり、なぜ挫折したのか。近代のはじまりを大胆によみかえ近代政治そのものを根底から問い直す斬新なる挑発の書、渾身の書き下ろし! 坂野潤治『明治デモクラシー』、松田裕作『自由民権運動』などの成果を踏まええつ、自由民権運動を20世紀的な政治経験の先駆けとして読み替えるとともに、そこに政論家として介入しようとした中江兆民の政治思想をそのルソー読解に分け入って考察し、歴史と思想に一石を投じる。
中江兆民と自由民権運動
長崎浩
¥2,800 (税別)
- 刊行年月:2023年4月
- 46判並製272頁
- 縦188mm×横130mm×背幅11mm
- 245g
- 本体価格2,800円
- ISBN:978-4-86503-161-4 C0010
目次
はじめに
1 結社の乱――国会創設を目指して
国会開設請願運動/維新第二革命と結社の蜂起/結社の多様性/結社の乱、そして全国評議会/秩父事件:反乱の中の党
2 愛国社――人民の天は人民なり
大衆の党/四方の衆人に告ぐる/愛国社から国会期成同盟へ/私立国会とは何なのだ/政府は天に非ず/コミューン国会論
3 ドキュメント 国会期成同盟第二回大会
結社の乱の頂点/初日から対立/継承か抹消か/愛国社の混迷/同盟規約、我らは誰なのか/精神主義への傾斜/同盟盟約の解消/主義の党か政治同盟か/振出しに戻って/自由民権運動の栄光
4 合法無血のクーデタ
もう一つの結社、交詢社/民情一新す/人心の狼狽に乗ずる/追い詰められる藩閥政府/国会勅諭とクーデタ
5 政論家中江兆民、登場
二つの自由新聞/民権運動に遅刻して/我自由党諸君に告ぐ/政治文書としての中江兆民/政治思想としての国会論/議院内閣制、天皇機関説/政治党派と党派闘争/専制政府に抗して/道徳の東西/政治倫理の方へ
6 兆民と一緒に読むルソー(一)――民約共同体
泰西政治の淵源へ/矯激の病なきにしもあらず/民約訳解の文体/我が歴代の聖主は/ルソー問題 四つの論点/団結かつ自由な政治体/自由の譲渡にして獲得/討議も私党も禁止/民約すでに成る/契約政治体の呼び名/混迷する訳語/政治体と人民、それぞれの盟約
7 兆民と一緒に読むルソー(二)――樫の木の下の国家
主権の限界/私人としての臣民/法、政治体の運動と意志/立法者と市民宗教/政府は主権者の公僕/人民の集会/樫の木の下の国家/泣きつつ読む盧騒民約論
8 政論、沖天の勢い――兆民の民権運動
死灰の再燃/三大事件建白運動/大同団結運動/水と油?:建白と大同団結/徳富蘇峰と兆民/乱民か勇民か/政党と党派闘争:大同団結運動のなかで/一大日本党は不可能なのか/懇親会 歴史の妖魔を背負って/大同団結の帰趨/国会へ
9 政論家の頂点――東雲新聞時代
首都へ還る/大同団結運動の第二期/小倶楽部から始めよ/大阪党の展望/国会独裁論/国会は政治の一大脳髄/彼の下らない憲法/捨て鉢の自由党再興/議員誕生/四千万人の砂漠
10 中江兆民退場――明治憲法体制へ
退場、無血虫の陳列場/国会議員の政党的良心/憲法点閲の目論見/議会政党への道/政府これ国、官吏これ民/自由党万歳/政治文書としての兆民/板垣と大隅、しぶとい二人/結党の精神という呪縛
あとがきに代えて
長崎浩(ながさき・ひろし, 1937-)
社会評論家。1960年、東京大学理学部卒業。大学院数物系中退。1963~70年、東京大学物性研究所助手。以降、東北大学医学部、東京都老人総合研究所、東北文化学園大学に勤務。第一次共産主義者同盟で活動、東大全共闘運動に助手共闘として参加。『叛乱論』などの著作で特異な革命と政治の思想を展開して熱狂的な支持と畏敬を集める。月曜社での既刊書に、2021年9月『叛乱を解放する――体験と普遍史』、2022年5月『国体と天皇の二つの身体――未完の日本国家物語』がある。