ジャン・ウリ(Jean Oury)
1924−2014。フランスの精神科医・思想家。20世紀後半のフランス精神医療に大きな貢献を残した人物。とりわけ「制度を使う精神療法」の主導者のひとりとして、1953年以来自身が院長を務めるラ・ボルド病院において、患者やスタッフとともにその実践に取り組んできた。また同時にパリのサン・タンヌ病院において1981年以来月1回のセミネールを行い、同運動の基盤となる思想について語り続けた。J・ラカンの最も重要な理解者のひとりでもあった。本書の他、邦訳に『精神医学と制度精神療法』(三脇康生監訳、春秋社、2016年)、また主要な著作として、サン・タンヌ病院でのセミネールの記録L'Aliénation : Séminaire de Sainte-Anne, 10e anné, Galilée, 2012(1992)、ラ・ボルド病院でのセミネールの記録Les séminaires de la Borde 1996-1997, Champ social, 1999、論文、小文、講演などを集めたOnze heures du soir à La Borde Éssais sur la psychothérapie institutionnelle, Galilée, 1980、数多い対談集のひとつA quelle heure passe le train... Conversations sur la folie (avec Marie Depussé), Calmann-Lévy, 2003などがある。
訳者:
多賀 茂(たが・しげる)
1957年生。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。パリ第4大学PhD。専門はミシェル・フーコーをはじめとするフランス思想と精神医学史。著書に、『イデアと制度 ヨーロッパの知について』(名古屋大学出版、2008年)、『医療環境を変える 「制度を使った精神療法」の実践と思想』(共著、京都大学学術出版会、2008年)、『なぜ、人は宇宙をめざすのか 「宇宙の人間学」から考える宇宙進出の意味と価値』(共著、誠文堂新光社、2015年)などがある。
上尾真道(うえお・まさみち)
1979年生。京都大学大学院人間・環境学研究科単位取得退学。博士(人間・環境学)。現在、滋賀県立大学など非常勤講師。専門は精神分析・思想史。著書に『ラカン 真理のパトス』(人文書院、2017年)、『発達障害の時代とラカン派精神分析』(牧瀬英幹との共編、晃洋書房、2017年)、論文に「「運動」としての精神分析のために」『at プラス』(30号、2016年)、「フロイトの冥界めぐり——『夢解釈』の銘の読解」(『人文学報』109号、2016年)などがある。
川村文重(かわむら・ふみえ)
1972年生。慶應義塾大学商学部専任講師。京都大学博士(人間・環境学)、エクス-マルセイユ第一大学PhD。専門はフランス文学・思想史。著書にDiderot et la chimie : Science, pensée et écriture (Classiques Garnier, 2014年)、論文に「〈自由〉と〈専制〉の奇妙な結合――恐怖政治期における〈活力energie〉の語意の変容を通して」(『慶應義塾大学日吉紀要 フランス語フランス文学』第64号, 2017年)、『政治思想と文学』(共著、ナカニシヤ書店, 2017年)などがある。
武田宙也(たけだ・ひろなり)
1980年生。京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。専門は哲学・美学。著書に『フーコーの美学――生と芸術のあいだで』(人文書院、2014年)、訳書にロベルト・エスポジト『三人称の哲学――生の政治と非人称の哲学』(岡田温司監訳、佐藤真理恵・長友文史との共訳、講談社、2011年)などがある。
写真・装幀:
田村尚子(たむら・なおこ)
写真家。写真集に、ラ・ボルド病院の日常を撮影した『ソローニュの森』(医学書院、2012年)のほかに、『タウマタ』(タカ・イシイギャラリー、2015 年)、『Voice』(青幻舎、2004年)などがある。