絶対的単独性の思想家への肉薄――人物像をめぐる狂乱から一線を画し、ド・マンのテクストをその思想のユニークさにおいて読みつつ、その可能性の消尽点まで追いつめる最重要書。彼が考える〈読むこと〉の徹底的に精密な論理構成と、それを方向づけている〈絶対的に絶対的な単独性〉という極端な概念がもつ厳密さを明らかにする試み。シリーズ・古典転生第25回配本、本巻24。
本書における各章はド・マンの仕事と対決することから浮かび上がるさまざまな問題を明らかにする試みである。それはたとえば、ド・マンにとって言語とは何なのか、メタファーとアレゴリーを何が区別するのか、行為遂行的というド・マンの概念はどの程度まで言語行為論に属しているのか、物質性という概念とその現象性からの区別をどのように理解すればいいのか、脱構築という言葉で彼は何を意味しているのか、といった問題である。これらの問題が主題化されているのは、すべて、読むことについてのド・マンの概念を解明し、読むことに内在する論理を詳細に描き出すためである。(序論より)
ド・マンの仕事のどこがユニークなのか。それ以前の哲学や批評の伝統からは何が異なっているのか。文学理論の非哲学的起源と、理論を構成すると同時に転覆する「実用的な契機」を、ド・マンは「理論的学問の行う真面目なゲームのなかの何かワイルド・カードのようなもの」にたとえる。文学理論、あるいはたんに理論とは、読むことのなかでのみ、そして読むことを通してのみ適切に折りあいをつけることができるような次元の言語理論である。読むことの理論、あるいはたんに(修辞学的に)読むこととは、このワイルド・カードなのである。
原書:The Wild Card of Reading: On Paul de Man (Cambridge, MA: Harvard University Press, 1998)