「明日、ぼくは旅立つ。似たような人間が出会い、陽気に遊んだりするのだろうが、人はけっして君のことを知ることはない、自分の肌の砦のどこかに隠れた、その君を知ることはないだろう」。時は第二次大戦中。少年の成長、そして旅立ちが、動乱に揺れるカリブ海の島バルバドスの命運と重なる。彼はなぜ土地から離れなければならなかったのか。生まれた場所から移動することで初めて知ることとは。エドワード・サイードやスチュアート・ホールも重視するポストコロニアル思想の原点にして、カリブ文学の古典的傑作。バルバドス出身の作家ジョージ・ラミングの小説、初めての全訳。訳者解題「近代の裏側を生きて――ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』を読むために」。【叢書・エクリチュールの冒険、第13回配本】
叢書・エクリチュールの冒険
私の肌の砦のなかで
ジョージ・ラミング
¥3,800 (税別)
吉田裕[訳]
カリブ文学の古典的傑作
- 刊行年月: 2019.05
- 46判並製480頁
- 本体価格3,800円
- 18.8 x 13 x 3.5 cm
- ISBN978-4-86503-075-4
紹介記事
- 大辻都氏書評(「図書新聞」2019年10月19日号「作家が育った二十世紀前半のバルバドスの社会状況が反映――今年はカリブ海の翻訳小説の当たり年だ」)
- 中村隆之氏書評(「週刊読書人」2019年8月30日号「外界を隔つ「私の肌の砦」――カリブ文学を代表する作家の〈原点〉」)
ジョージ・ラミング(George Lamming)
1927年、バルバドス生まれ。1953年、小説『私の肌の砦のなかで』でデビュー。その他の作品に小説『成熟と無垢について』(1958年)、小説『冒険の季節』(1960年)、批評集『故国喪失の喜び』(1960年)などがある。現在までに計6冊の小説、1冊の批評集を出版。最も重要なカリブ文学の作家のひとり。
訳者:
吉田裕(よしだ・ゆたか)
1980年、岐阜生まれ。東京理科大学専任講師。専門はカリブ文学及び思想、ポストコロニアル研究、文化研究。訳書にノーム・チョムスキー『複雑化する世界、単純化する欲望――核戦争と破滅に向かう環境世界』(花伝社、2014年)、ニコラス・ロイル『デリダと文学』(共訳、月曜社、2014年)、ポール・ビュール『革命の芸術家――C・L・R・ジェームズの肖像』(共訳、こぶし書房、2014年)など。