20世紀フランスにおける哲学史研究の大家ゲルーによる、18世紀ドイツの哲学者マイモンをめぐる精密かつ重厚な古典的論考(1929年)。マイモンが実在としての理念に微分の実現という視角から迫ることの意義を明らかにする。マイモンの微分は関係性の中で相互的規定を受ける各項の働きを指すだけでない。それはライプニッツの無限小に示唆を受けた無限小としてのΔxやΔyを経て物自体を無理数と捉えることへ向かう。超越的なものをひたすら避け、内在に訴えようとするこの議論はドゥルーズらを触発してやまない。シリーズ・古典転生第27回配本、第26巻。
原書:La Philosophie transcendantale de Salomon Maïmon, Paris, Félix Alcan, 1929.
目次
序論 マイモン哲学の精神
第I章 ア・プリオリな総合判断にかかわる問題
第1節 『純粋理性批判』のコペルニクス的な仮構
第2節 ア・プリオリな総合判断に関する事実問題〔クイド・ファクティー〕および権利問題〔クイド・ユーリス〕の問い カントによる解決の不十分さ
第3節 ライプニッツ的な解決の粗描
第4節 独断主義的でもなければ、カント主義的でもないが、にもかかわらず超越論的な中間的解決の探究
第5節 矛盾の原理[矛盾律]および相互的規定の原理の削除
第6節 規定可能性の原理
第7節 規定可能性の原理の諸帰結
第8節 数学的な規定可能性の原理の不十分さ 差異の原理
第9節 差異の原理そして無限な悟性の観念
第II章 無限な悟性、諸微分――〈質料〉の演繹
第1節 意識の微分に関する理論と質料の演繹
第2節 〈自我〉と意識
第3節 無限な悟性
第III章 〈空間〉と〈時間〉の演繹
第1節 空間概念と時間概念の解明(Erörterung)
第2節 〈空間〉と〈時間〉の演繹
第IV章 〈カテゴリー〉の演繹
第1節 〈カテゴリー〉の演繹
第2節 権利問題〔クイド・ユーリス〕と事実問題〔クイド・ファクティー〕の問いへのマイモンの応答
第3節 マイモンとフィヒテ
結論 実践哲学の観点におけるマイモンの批判の諸帰結
補論
注釈一
注釈二
注釈三
訳者解説「マイモン哲学のひとつの射程」
始めに
哲学者と哲学史家
ゲルーとドゥルーズ
ドゥルーズ哲学の別の鉱脈
ドイツ観念論の揺籃期
マイモンの企図
(a)悟性の規則と発生論的関係
(b)主語と述語
(c)微分と理念
(d)規定可能性の原理から差異の原理へ
(e)フィヒテの思想圏
ドゥルーズ、カント、マイモン
(a)理念の微分化/差異化
(b)異化/分化としての積分
(c)実在の二つの産出軸
(d)ドラマ化について
(e)差異の本性――強度的なもの
(f)三つの反復
終わりに
訳者あとがき