境界を越えて
C・L・R・ジェームズ

¥3,000 (税別)

本橋哲也[訳]

スポーツと植民地解放闘争を結びつけた歴史的名著。

  • 刊行年月: 2015.03
  • 46判並製456頁
  • 本体価格3,000円
  • 19 x 13 x 2.5 cm
  • ISBN978-4-86503-022-8

英国植民地であった西インド諸島トリニダードに生まれ、最も英国的なスポーツ=クリケットに育まれたひとりの黒人革命家が、この競技の倫理とこの競技への民衆の熱狂に政治的解放の原動力を見いだすさまを描いた自伝的著作。

「ジェームズは独学者にして運動選手、そして早熟な小学生の面影をつねに宿している人物であり、歴史や政治や理論について革命家の見地から関心をもちつづけ、思想や矛盾に対しても知識人としての感度を失わず、すぐれた文学や音楽や会話のもつ純粋にスポーツ的冒険要素に鋭敏であった」(E・W・サイード『文化と帝国主義』より)。

原書: Beyond a Boundary, London: Stanley Paul & Co., 1963.

目次

謝辞
前書き
一部 世界への窓
1章 窓
2章 流れに逆らって
3章 学校の同窓ネクタイ
二部 世界は舞台
4章 白さと黒さ
5章 忍耐という美徳
6章 三つの世代
7章 裏切りの一撃
三部 時の人
8章 王子と乞食
9章 政治における寛大さ
10章 能ある鷹は爪を隠す
四部 しばしの休憩をはさんで
11章 ジョージ・ヘドレー――詩人は作られるのではなく、生まれる
五部 W・G――卓越したヴィクトリア朝人
12章 人は何をもって生きるか?
13章 W・G序説
14章 W・G
15章 西洋の没落
六部 芸術、そして現実
16章 「芸術とは何か?」
17章 福祉国家の心性
七部 人民の声
18章 論より証拠
19章 母校――外と内の神々
エピローグと神格化

訳者あとがき
附録 クリケットの競技概要

紹介記事

  • 吉田裕氏書評(「週刊読書人」2015年7月17日号「「抵抗する」知識人の生を描く」)
  • 赤尾光春氏書評(「年報カルチュラル・スタディーズ」第3号[2015年6月発行]「世界史と芸術論を架橋する革命的クリケット文化批評」)
  • 中村和恵氏書評(「朝日新聞」2015年6月7日付「読書」欄「クリケットで語る植民地の精神」)
  • 藤島大氏書評(「日本経済新聞」2015年5月13日付夕刊「エンジョイ読書 目利きが選ぶ今週の3冊」欄「黒人思想家のスポーツ愛」)
  • 中島俊郎氏書評(「北海道新聞」2015年5月3日付「本の森」欄「スポーツ文化史の名著」)

C・L・R・ジェームズ(C.L.R.(Cyril Lionel Robert) James)
作家、思想家、政治活動家。1901年、英国領西インド諸島トリニダード島ポート・オブ・スペインで生まれる。島での青年時代には、教師や執筆活動とともにクリケット選手としても活躍していた。1932年に英国に移住。トロツキー派のマルクス主義グループに加わる。1938年、半年間の講演旅行の名目でアメリカ合州国に入国。メキシコでトロツキーと会談したのち、米国に15年間滞在しつづけ政治活動を行う。1950年にトロツキー派から離脱。1953年に米国から追放され、以後、英国、トリニダードなど各地で、西インド諸島独立運動やパン・アフリカ運動を展開する。1989年、英国ロンドンで死去。
著作は、政治思想、歴史、文学批評、小説、スポーツ批評など多岐にわたる。これまでに日本語訳された著書は『世界革命1917~1936 コミンテルンの台頭と没落』(対馬忠行・塚本圭訳、風媒社、一九七一年)、『ブラック・ジャコバン トゥサン= ルヴェルチュールとハイチ革命』(青木芳夫監訳、大村書店、一九九一年[二〇〇二年、増補新版])。その著作と生涯は、E・W・サイードらポストコロニアルの知識人たちに大きな影響を与えつづけている。

訳者:
本橋哲也(もとはし・てつや)
1955年東京生まれ。東京経済大学コミュニケーション学部教授。専攻は英文学、カルチュラル・スタディーズ、演劇批評。単著に『カルチュラル・スタディーズへの招待』(大修館書店、2002年)、『ポストコロニアリズム』(岩波新書、2005年)、『思想としてのシェイクスピア』(河出ブックス、2010年)ほか。翻訳書は、レイ・チョウ、ホミ・バーバ、G・スピヴァク、ジュディス・バトラー、アルンダティ・ロイ、N・チョムスキー、デヴィッド・ハーヴェイほか。

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