失業の先にあるのは「求職」「再就職」だけではない。
職場を占拠せよ、労働を拒否せよ、偽通貨を流通させよ! 闘いの都市ブエノス・アイレスが、いま、私たちに呼びかける。
政治経済運動の新たなる水平的・自律的集団性(アサンブレア)の構築へ。21世紀の始まりとともに、ネオリベラリズムに抗して立ち上がったアルゼンチンの失業労働者や職場占拠労働者、都市中産階級たちの様々な実践と挑戦を紹介。《生活=闘いのための作業仮説》をめぐる、熱き対話集。
(本文より)
「廣瀬:アサンブレアの試みにおいて興味深いことのひとつは、この運動が自分たち自身で互いに呼びかけ合うことによって出現したという事実にあるということ、政党によるリーダーシップも、労組によるリーダーシップもなしに生まれてきたということです。」
「コレクティボ・シトゥアシオネス:次のようにも言えるかもしれません。アサンブレアが構成したものは、都市部の断片化された空間全体のなかに国家的でも市場的でもないような公共空間を生産するための、潜勢力に満ちたひとつの新たなやり方なのだと。」
目次
まえがき 廣瀬純
第一章 19/20—-権力を解任する民衆蜂起
ポジティヴな「NO」/蜂起の背景/新たな社会的主役/アサンブレア、ピケテロ運動、そして銀行預金者たち/略奪行為の意味/「みんな去れ、ひとりも残るな」/アルゼンチンにおいて「階級」を語ることの問題点/各社会階層の変化/ペロニスモ
第二章 ピケテロ運動—-自律性・水平性の実践
アルゼンチンにおける社会的諸実践/ピケテロ運動とは何か?/社会プラン/二〇〇一年一二月をめぐる各派のスタンス/二〇〇二年六月二六日の虐殺/「自律性」と「水平性」/「自律性」と「自立」のちがい/運動に対する日常的な攻撃/新しい社会的関係の日常的な構築/アサンブレア的な実践/バリオとの関係性/近隣住民アサンブレアとピケテロスのアサンブレア/教会
第三章 雇用主のいない企業、オルターナティヴ市場
労働者たちによって自主管理された企業/占拠のありようの多様さ/ブルクマンで何が起こったのか?/「生産組合化」と「国有化」/弾圧の意味/工場占拠と女性たち
第四章 都市中産階級の政治化—-近隣住民アサンブレア
アサンブレアのダイナミクス/近隣住民アサンブレアの出現と展開/グローバルな抵抗運動との関係/「占拠」に対する政府の態度/キルシネル政権と「民衆」
第五章 正義がないなら、エスクラチェがある—-「母たち」と「子どもたち」
エスクラチェと「新たな革命的主観性」/「母たち」と「子どもたち」/新たな革命的主観性/民衆エスクラチェ委員会/アルゼンチンの「錯綜した歴史」/エスクラチェの一般化によってあきらかになったこと
付録 コレクティボ・シトゥアシオネス+サンドロ・メッザドラ
二〇〇四年七月—-権力を解任するカーニバル/二〇〇五年一〇月—-運動のメランコリー
解説 ブエノス・アイレス報告 廣瀬純
「みんな去れ、ひとりも残るな!」/「脱政治化された消費者」たちの闘争(アサンブレア運動)/失業労働者たちの闘争(1)—-運動の震央としての「郊外」/失業労働者たちの闘争(2)—-「市場」からの脱出/「我々はみな《五月広場の母たち》の子どもだ」(キルシネル政権)/「制度的正常」と「ふつうの資本主義」とへの回帰/さらば、ブエノス・アイレス
あとがき コレクティボ・シトゥアシオネス