人間の未来、知の未来、教育の未来をかけて、いまこそ危機に挑む! あらゆる規範と前提を問い直し、権力の数々の横暴に対して抵抗を試みる《新たな人文学》と、公共空間の再創造を構想する、著者最晩年の渾身の講演録。「時間をかけてください、しかし、急いでそうしてください。何があなた方を待ち受けているのか、あなた方は知らないのですから」(デリダ)。
本書より:「私が「新たな」〈人文学〉という表現によって何を言おうとしているのか、これから明確にしてみましょう。これらの議論が批判的なものであろうと、脱構築的なものであろうと、それは人間、人間本性、人権、人道に反する罪、等々に関係する真理の問いと歴史に関わるのですが、それらすべては原則的に、大学のなかに、また大学のなかでもとりわけ〈人文学〉のなかに、無条件的で前提を欠いたその議論の場を、何かを検討し再考するための正当な空間を、見い出さなければなりません。それはこの種の議論を大学や〈人文学〉のなかに閉じ込めるためではなく、逆に、コミュニケーションや情報、アーカイヴ化、知の生産をめぐる新しい技術によって変容する新たな公共空間へと接近するための最良の方法を見い出すためです」。
原書: “L’Université sans condition”, Jacques Derrida, Paris: Galilée, 2001.