〈自己〉という最小回路を形成すること――スピノザとドゥルーズの先にある新たな〈エチカ〉の誕生。あらゆる道徳的な超越主義(同一性の優越=差異の排除、精神の特権化=身体の無視、人間中心主義的な位階序列化……)を根底から批判する内在性の哲学へ。カントを一義性の哲学として論究し、フーコーの「言表」を身体の作用として論じ、内在性の核心に〈非‐規定性〉を見出す、最新書き下ろし作。
内在性の問題
江川隆男
¥4,300 (税別)
2024年4月11日取次搬入予定
- 刊行年月:2024年4月
- 46判上製560頁
- 縦194mm×横133mm×束幅40mm
- 648g
- 本体4,300円
- ISBN:978-4-86503-186-7 C0010
目次
序論 内在性への配慮
内在性の問題
どのように〈自己〉を理解するか
〈自己〉認識について
主観性から被観性へ――自然に内在し直すこと
注(序論)
第Ⅰ部 超越論と内在性
第一章 カントと一義性の思考
一つの錯綜体について―― 一義性とアナロジー
内在性という外部―肖像画の下のキャンバス
超越論的概念の一義性について
〈構成〉以前の存立面(I)――超越論的対象について
物自体について(α)――それ自体において多様なもの
〈構成〉以前の存立面(II)――超越論的統覚について
〈感性‐受容能力〉の真の意義
非対称性の遠近法的空間
裁断と縫合への努力
物自体について(β)――それ自体において多義的なもの
〈構成〉 以前の存立面(III)―― 一つの可能的経験について
物自体について(γ)――〈前‐哲学的なもの〉 から 〈偽なるもの=X〉 へ
注(第一章)
第二章 一義性とアナロジー
非‐様相としての内在性
存在の一義性の系譜学的要素(I)
カテゴリーの様式化
存在の一義性の系譜学的要素(II)
先端と前提
現象と稀薄化
アナロジーの非‐類推的力能について
移行による多重化(1)――認識の一義性について
移行による多重化(2)――経験の一義性について
批判機能
禁令の意義――批判的形而上学におけるアナロジーの問題について
反復としてのアナロジーの特異性
主観化の過程――『純粋理性批判』における〈折れ目〉(Pli)の構造
近代哲学における一つの結論――錯綜体としての主観性
注(第二章)
第Ⅱ部 内在性と被観性
第三章 自己と言表
問題構成(I)
人間身体の性的差異について
〈有限‐無際限〉性の分析批判
超越論的観念論と内在論的観念論について
一義性への配慮
配慮の差異――〈発生的〉と〈名目的〉
時間性の問題――カントにおける〈自己〉とは何か
自己認識から自己配慮へ
〈認識〉と〈配慮〉の不可識別性について
〈自己の差異〉について
〈観念‐言表〉論序説
言表の批判的分析論
言表の機能論的分析論
言表の分裂的総合論(I)――〈AZERT〉の規則性
言表の分裂的総合論(II)
観念と言表
言表と判断
〈可能的であれ、実在的であれ〉———経験の内在性について
注(第三章)
第四章 非‐規定的総合
哲学の発狂
問題構成(II)
規定性図式論の限界について
非‐規定性の忘却――相関主義批判に抗して
〈非—規定性〉について
〈報告〉と〈投射〉――前‐哲学的なものに対する配慮の差異
内在性の哲学の諸特徴
直観知の対象性
言表の脱アナロジー化
脱カテゴリー化の言説
言表論(I)
言表論(II)
横断性並行論の事例
焼尽する〈身体なき地図〉
抽象機械論
地図作成法の可能性の中心
被観性は産出されうるか
発語内行為と自由意志
非身体的変形と強度的宇宙について
被観性の産出――非身体的変形の位相について
地球倫理学――分子的内在性論と非‐ニヒリズム化
注(第四章)
結論 エチカの諸要請
内在性の哲学――存在論から並行論へ
唯物性観念論――言表作用について(I)
機械状観念論――言表作用について(II)
非‐戦闘的行為――倫理学の極限形相
内在様相と連続変化について
注(結論)
あとがき
江川隆男(えがわ・たかお)
1958年生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科特別専任教授。著書:『存在と差異――ドゥルーズの超越論的経験論』知泉書館、2003年;『死の哲学』河出書房新社、2005年;『超人の倫理――〈哲学すること〉入門』河出書房新社、2013年;『アンチ・モラリア――〈器官なき身体〉の哲学』河出書房新社、2014年、『スピノザ『エチカ』講義――批判と創造の哲学のために』法政大学出版局、2019年;『すべてのつねに別のものである――〈身体-戦争機械〉論』河出書房新社、2019年;『残酷と無能力』月曜社、2021年。訳書:ジル・ドゥルーズ『ニーチェと哲学』河出文庫、2008年;ジル・ドゥルーズ+クレール・パルネ『対話』共訳、河出書房新社、2008年(文庫版『ディアローグ――ドゥルーズの思想』河出文庫、2011年)。