マラルメの「散文詩」全十三篇の翻訳。その執筆と発表は彼の創作活動のほぼすべての時期にわたり、1860年代に「秋の歎き」「青白い憐れな子ども」を含む5篇、70年代に3篇、80年代に4篇、最後の「葛藤」が発表されたのは1895年である。各篇はまず新聞や雑誌に掲載され、その後3度(小冊子を加えれば4度)、単行本に収録された。その最後が1897年の『ディヴァガシオン』で、その際は「逸話あるいは詩」という総題のもとにまとめられた。プレイアード叢書の新編『マラルメ全集』の編者マルシャルは、マラルメにあっては「散文詩はもっとも日常的な現実からとってきた逸話を喚起し、ボードレールが語っていた『現代生活の描写』が受け継がれている」と述べている。
散文詩篇
ステファヌ・マラルメ
¥2,000 (税別)
柏倉康夫[訳]
- 刊行年月:2023年7月
- 46判並製112頁
- 188x128x7mm
- 170g
- 本体価格2,000円
- ISBN:978-4-86503-169-0
目次
目次:
未来の現象
秋の歎き
冬の戦慄
類推の魔
青白い憐れな子ども
パイプ
見世物中断
ひそかな記憶
縁日興行の口上
白い睡蓮
聖職者
栄光
葛藤
訳者解題
ステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé, 1842‒1898)
19世紀のフランス象徴詩を代表する詩人。若くしてボードレールとエドガー・アラン・ポーに魅せられて詩作をはじめ、地方の高等中学校の英語教師をしながら創作に没頭するが、「詩とは何か」という根源的な問いに苦しみ、精神的・肉体的な危機に見舞われた。1871年パリに出て以後は交友関係も広がり、「牧神の午後」や「エロディアード」など代表作となる絶唱を生み出した。ローマ通りのアパルトマンの食堂兼サロンに、毎週火曜日に内外の文学者、画家、音楽家たちが集うようになり、マラルメの談話は彼らに多大な感銘を与えた。その芸術論は今日なお広い分野で影響を及ぼしている。近年の訳書に以下のものがある。『マラルメ全集』(全5巻、筑摩書房、1989~2010年)、『マラルメ詩集』(渡邊守章訳、岩波文庫、2014年)。
柏倉康夫(かしわくら・やすお, 1932-)
柏倉康夫(かしわくら・やすお, 1932-)……放送大学大学名誉教授。東京大学文学部フランス文学科卒業。NHKパリ特派員、解説主幹の後、京都大学文学研究科教授を経て、放送大学教授、副学長、図書館長。京都大学博士(文学)。フランス国家功労勲章叙勲。ジャーナリズムでの仕事のかたわら、原典批判に基づくマラルメ研究を続けてきた。月曜社より上梓されたマラルメの訳書に、『詩集』(2018年)、『賽の一振り』(2022年)がある。