なぜ私たちは、権力への服従を欲望してしまうのか
私たちの主体形成の過程において、社会的統制の暴力は、外側から一方的に行使されるのではなく、自分自身に「振り向くこと」、良心、自己叱責といった心的なものを通じて機能する。権力による「主体化=服従化」の過程を、フーコー、アルチュセール(権力理論)と、ヘーゲル、ニーチェ、フロイト(心的なものの理論)から徹底的に考察し、抵抗の契機を模索する。 【重要な訳語を再検討し訳文を改訂した新版】
原書: THE PSYCHIC LIFE OF POWER: THEORIES IN SUBJECTION, Stanford University Press, 1997.
目次
謝辞
序論
情熱的な愛着
両義性
主体化=服従化/従属化
心的なものの統制
第一章 頑固な愛着、身体の服従化――《不幸な意識》をめぐるヘーゲルを再読する
ヘーゲルと自己隷属化の生産
ポスト・ヘーゲル的主体化=服従化
第二章 疚しい良心の回路――ニーチェとフロイト
ニーチェによる疚しい良心の説明
フロイト、ナルシシズム、統制
第三章 服従化、抵抗、再意味化――フロイトとフーコーの間で
第四章 「良心は私たち皆を主体にする」――アルチュセールによる主体化=服従化
第五章 メランコリー的ジェンダー/拒否される同一化
生動させ続けること――ジュディス・バトラーへのコメント(アダム・フィリップス)
アダム・フィリップスによる「メランコリー的ジェンダー/拒否される同一化」へのコメントに対する応答
第六章 精神の始原――メランコリー、両価性、怒り
解説 主体化=服従化の装置としての禁止の法――バトラー『権力の心的な生』とアルチュセール、フーコー(佐藤嘉幸)
訳者あとがき
新版への訳者あとがき