20世紀後半の西欧哲学と人文諸科学に大きなインパクトを残したハイデガーの〈現前性批判〉とはいかなる思索の格闘であったか。アリストテレス哲学をめぐるハイデガーの大胆かつ緻密な〈現象学的解体〉を丹念に分析し、その知的射程を浮き彫りにする新鋭の挑戦。ギガントマキア(巨人の闘い)をめぐる終わりなき対話と対決!
【シリーズ「古典転生」第11回配本、本巻10】
「たしかにハイデガーは、伝統的存在論が「現前性」や「被制作性」に導かれてきたことを批判する。しかしそれは、そのようなレッテルを貼って斥ければ伝統から逃れられるなどという単純な話ではない。その批判をたえず自ら自身へと向けなければならないことをハイデガー自身が痛烈に自覚していたからである。だからこそ、ハイデガー自身の存在論の背後にはつねにアリストテレス哲学を透かし見ることができる。伝統から逃れられるのは、伝統との対話と対決をそのつど行いつつ、各自が自らの実存を賭して存在論を遂行している合間だけなのである」(本文より)。