歴史の忘却に逆らうだけでなく、歴史の捏造的想起の誘惑に陥ることをも回避するために
グローバリゼーションのただなかで歪められ、利用され、抹消される歴史と地理。何が真実なのか? あるいは何が真実という誘惑なのか。忘却のテロルに逆らいつつ、なおかつ真実を捏造することの物語的大義へと陥らないために、舞台芸術は記憶のポリティクスのただなかへと突き進んでいく。
舞台芸術04
¥2,000 (税別)
責任編集=太田省吾・鴻英良
特集=歴史と記憶
- 刊行年月:2003年9月3日発売
- A5判(タテ209×ヨコ148×ツカ15)並製286頁カバー装
- 本体価格2,000円
- ISBN:4-901477-54-4
目次
<歴史>の誘惑 太田省吾
忘却をまぬがれるために 鴻英良
野田秀樹 インタヴュー 聞き手=鴻英良 演劇、もしくは復讐に向かわないための知性
「コドモ身体」ということ—-コンテンポラリー・ダンスにみる歴史と記憶(?) 桜井圭介
マニラのジュネ—-時代のカオスを奪還せよ ルストム・バルーチャ 訳=エグリントン佐藤みか
思い出される身体 岡本章
ドキュメント ラオコオン2002—-国際演劇祭の新世紀
【上演作品紹介】
劇団マンディリ/スタンズ・カフェ/ブラック・スワン・シアター・カンパニー/アルジュン・ライナ/テアーター・ノイマルクト/ザ・カンパニー/ピナ・バウシュとヴッパダール舞踊団/DA・M/ジョン・ジェスラン/サーシャ・ヴァルツとシャオビューネ・アム・レーニナ・プラッツ
【シンポジウム】
グローバリゼーションの時代における歴史と記憶
参加者=ハンス=ティース・レーマン、内野儀、多和田葉子、ニーラム・マン・シン・チャウドリー、 秀実、ラミース・エル=アマリ、アンドリュー・ロス 司会=鴻英良 《レクチャー》
遅延と思索—-経済的時間への抵抗 ハンス=ティース・レーマン 訳=谷川道子
歴史と記憶—-九月一一日以降に「忘却の穴」から抜け出るために 内野儀
死者たちの劇場 多和田葉子
記憶と歴史のプリズム ニーラム・マン・シン・チャウドリー 訳=長島確
今日へのターニング・ポイントとしての一九六八年—-その革命と反革命 スガ秀実
アラブ演劇における東西の出会い ラミース・エル=アマリ 訳=横山義志
黒い白鳥 アンドリュー・ロス 訳=戸谷陽子
【フェスティヴァル報告】
歴史と記憶をめぐる演劇表象の今を問う—-「ラオコオン演劇祭」の位相 谷川道子
私はサイボーグになりたい—-ラオコオン・フェスティヴァル批判 荻野哲矢
キノコ雲の上の天使—-サーシャ・ヴァルツ『noBody』ニャンコ
リーパーバーンで檳榔を 井土紀州
■時 評 ■
「殺す・な」 内野儀
ダンスの技術が生まれる瞬間 國吉和子
『国姓爺合戦』を中心に 小林昌廣
■連 載 ■
観世榮夫 わが演劇、わが闘争4 インタヴュー 聞き手=新藤兼人
やさしい現代演劇4 川村毅
過渡期としての舞台空間—-小劇場演劇における「昭和三〇年代」3 森山直人
舞台芸術研究センターとは
京都造形芸術大学(学校法人瓜生山学園)が2001年4月に開設した舞台芸術研究センターは、 舞台芸術の全創造過程を研究対象として、乖離しがちであった創造の現場と学術研究とのより有機的な結びつきを推進しています 。京都芸術劇場(「春秋座」「studio 21」)という学内劇場を活用することで、この関係が当センター独自のものとして確立され ることとなります。また、映像・舞台芸術学科を中心とした学内研究員による上演実験とその研究活動のみならず、学外の研究員や 国内外の研究機関との共同研究など、過去にない新たな舞台芸術研究のネットワークづくりを目指します。現在の日本の舞台芸術、 文化情況が狭窄的ではないかという共通理解のもと、それを解放するための多様な試みとしての『舞台芸術』を年3回刊行します。
http://www.k-pac.org 住所:〒606-8271 京都市左京区北白川瓜生山2-116
TEL:075-791-9437 (舞台芸術研究センター事務所)