西洋の中にありながら西洋そのものではないという〈二重意識〉として存在する近代の黒人たち—-彼ら/彼女らが行き交い続ける、間文化的でトランスナショナルな時空間である〈ブラック・アトランティック〉。
この時空間における、黒人音楽(フィスク・ジュビリー・シンガーズ、ジャズ、ジミ・ヘンドリックス、ヒップホップなど)の流通や、黒人思想家たち(フレデリック・ダグラス、W・E・B・デュボイス、リチャード・ライトら)によるヘーゲル、ニーチェ、フロイトなどの西洋批判理論との対峙の軌跡を辿り、奴隷制以降の黒人の抵抗と自立の歴史をナショナリズム的なパラダイムを超えた視点から考察する。
原書: “The Black Atlantic : Modernity and Double Consciousness”, Paul Gilroy, 1993, Verso.