生・病・死という根源的な主題を、レヴィナス、ハイデガー、ベンヤミンらとの対決をとおして根底から問いなおした、今こそ読まれるべき四つの著作を、一冊にまとめて、復活。「振り返れば、四冊それぞれは自分としては最も強い緊張感で、楽しみながらも何ものかと闘いながら書き下ろしたものです。その意味で、…新たな若い読者の方々に迎えられることを願っています」(「はじめに」より)。『弔いの哲学』(河出書房新社、1997年)、『生殖の哲学』(河出書房新社、2003年)、『レヴィナス』(NHK出版、2003年)、『病いの哲学』(ちくま新書、2006年)を合本し、書き下ろし動物論を付す。
弔い・生殖・病いの哲学――小泉義之前期哲学集成
小泉義之
¥3,600 (税別)
- 刊行年月:2023年5月
- 46判並製480頁
- 縦188mm×横125mm×束幅27mm
- 440g
- 本体価格3,600円
- ISBN:978-4-86503-163-8 C0010
目次
目次:
はじめに
I 弔いの哲学
まえがき
第一章 葬礼論
死者と死体|埋葬の発生|戦死者の発生|刑罰の発生|喪の〈仕事〉|野辺送り
第二章 亡霊論
六千の死者|御霊信仰|現代の亡霊|戦犯|敵兵と戦友|英霊と無名戦士|被害者/犠牲者|犠牲者の〈分〉
第三章 戒律論
モラルの原則|レヴィナス対デリダ|他人の名|殺すことはない|殺生禁断
第四章 贖罪論
ベンヤミンの暴力批判|神の暴力|自然の掟
第五章 忘却論
生前と生後|忘却の記銘|私は傘を忘れた|死者の名|死にし子の顔よかりき
あとがき
II 生殖の哲学
はじめに
第一章 未来からの視線――生命・自然
死と死者にとらわれた時代|未来の予測――地球温暖化・環境化学物質・移入種・バタフライ効果|未来の兆候――ターミネーター・エイリアン|性と死――生ける屍|生殖の未来――フランケンシュタイン博士・モロー博士・ダナ・ハラウェイ|有望な怪物――優生思想批判
第二章 生殖技術を万人のものに――「交雑個体」を歓待する
論外なこと|生殖補助技術|クローン技術|新胚作出技術
第三章 未来と生殖をめぐって
あとがき
III レヴィナス
はじめに――生きていてよいのか
第一章 自分のために生きる
こんなもののために生まれてきたんじゃない|No Music, No Lif|幸せに生きること|ただ生きること|逃走の欲求、形而上学的欲望
第二章 他者のために生きる
倫理の始まり|他者の顔|他者の最初の語|基盤としての倫理|弱者の像|言葉の受肉|「私」の受肉|人類のために生きる
第三章 来るべき他者のために
とはいえ、私は死ぬ|存在と無、生成と消滅、生と死|肉体の愛|他者のための生殖|生命の断絶と連続|生殖の存在論
あとがき
IV 病いの哲学
はじめに
第一章 プラトンと尊厳死――プラトン『パイドン』
プラトンは病気だった|秘儀――人間家畜論|死ぬことの練習|ソクラテスの魂論の正体|生と死のリサイクル|霊魂と亡霊|善をなしてくれる他者|実験的牢獄としてのオレゴン州|謎の男トマ
第二章 ハイデガーと末期状能――ハイデガー『存在と時間』
死へ向かう存在|本来性は何ではないか|それは自己決定でもない|終わりから始まりへの反転|フーコー瞥見|世代交代――ライフ・サイクルのサイクル|共同体――死より上位の審廷|人間/動物
第三章 レヴィナスと臓器移植――レヴィナス『存在の彼方へ』
身代わりは自己の内臓のうちで作動する|ドナーとレシピエント|生まれる前からの使命|呼吸器|秘儀――兄弟関係|生き残りと生き延び|犠牲・献身|レシピエントの生
中間考察――デリダ
第四章 病人の(ための)祈り――パスカル、マルセル、ジャン=リュック・ナンシー
病いの善用を神に求める祈り|絶望と希望|共同-体
第五章 病人の役割――パーソンズ
排除と包摂のゾーン|コミュニケーション・ギャップ|潜在的逸脱の社会的統制|病人役割の現在と未来
第六章 病人の科学――フーコー
末期の眼|死を見てしまった眼のまなざし|病人の生|生きとし生けるもの
あとがき
人間の終焉、人類の円環――後書きに代えて
はじめに
1 自然に還れ?
2 動物論的転回(The Animal Turn)
3 構造的他者論の拡大適用
4 デリダ瞥見、ドゥルーズ/ガタリ瞥見
5 ミメーシスとポイエーシス
小泉義之(こいずみ・よしゆき)
1954年生まれ、立命館大学院先端総合学術研究科特任教授。著書に『兵士デカルト――戦いから祈りへ』『デカルト哲学』『ドゥルーズの哲学――生命・自然・未来のために』『あたらしい狂気の歴史――精神病理の哲学』『あたかも壊れた世界――批評的、リアリズム的』『ドゥルーズの霊性』『災厄と性愛――小泉義之政治論集成Ⅰ』『闘争と統治―小泉義之政治論集成II』『哲学原理主義』など。