ジャズの“死滅”へ向けて
文学、哲学、政治、科学、神秘主義、あらゆる知の領野を踏破して批評言語に清新な息吹を吹き込み、時代の感性と知性を深く動揺させた音楽批評家/オルガナイザー、間章。音楽を取り巻く「制度」への闘争を宣言する、著者畢生の大著。
時代の未明から来たるべきものへ 間章著作集Ⅰ
間章
¥4,600 (税別)
ジャズの“死滅”へ向けて
音楽を取り巻く「制度」への闘争を宣言する、著者畢生の大著。
- 刊行年月: 2013.1
- 四六判(タテ190mm×ヨコ133mm)上製480頁
- 本体価格4,600円
- ISBN978-4-901477-69-7
目次
■フリー・ジャズ黙示録
解体と非連続の系譜
地獄論への素描とその前書|転形論への下降とその光景|地獄めぐりの論理となしくずしとニヒリズムの戦略 迷路をわたる都市ブルースの変容とその回路|地獄論の余白または自己破減と〝なしくずし〟への無限過程⑴|地獄論の余白または自己破減と〝なしくずし〟への無限過程⑵|地獄下りの諸相 ニヒリズムとデカダンスとの相剋⑴|地獄下りの諸相 ニヒリズムとデカダンスとの相剋⑵
フリー・ジャズ運動とその展開
フリー・ジャズ戦略とその多様な地平変換と覚醒へのアマルガム|エントピアの地平 イギリス・フリー・ジャズ・シーンをめぐって⑴ AMMとSMEそしてIskra1903の周辺|エントピアの地平 イギリス・フリー・ジャズ・シーンをめぐって⑵ フリー・ジャズ・アナキスト群像|「黙示録」の終りなさに向けての断章─地獄論回帰
■ジャズの〝死滅〟へ向けて
廃墟論
ジャズの〝死滅〟へ向けて|同一性と自同律について|無関心[ニル・アドミラリ]と無感動[アパテイア]について|記憶と忘却─廃墟=私・論へ
倫理論
非命と流刑─死者そして滅びへの倫理⑴|非命と流刑─死者そして滅びへの倫理⑵|悪と滅尽への倫理⑴|悪と滅尽への倫理⑵
否定神学論または死論─〝神と死〟をめぐるブルジョワ思想批判ノート
ニヒリズムと死の人類学 序|死の人類学 〝神と死〟の埋葬|〝西洋〟と〝ロゴス〟の殲滅⑴ ハイデッガー批判への視線[まなざし]|〝西洋〟と〝ロゴス〟の殲滅⑵ ハイデッガー批判への方位|個と幻影の終り─〝変革〟への道|幻影から覚醒ヘ─〝変革〟への方位|革命への「アナーキズム」ヘ|「アナーキズム革命」の基礎とその存りか
■季節の迷路から
視線[まなざし]について|「夜[ニュクス]」そして朝の終り|鏡の中の男との対話⑴|扉の向う側の砂漠そして冬|ホモ・ヴィアトール(HOMO VIATOR)|ジャズの終りがさらに遠い一日の中で|敵とその所在について|無季・非時[ときじく]|ニューヨーク もうひとつの冬またはガラス玉の中の雪|ニューヨークのフリー・ジャズそしてもうひとつの雪|ひとつの旅または机の上の双眼鏡|「一人の死者への手紙」 七六年・夏|鏡の中の男との対話⑵|迷宮[ラビリンス]論⑴ 窓について|迷宮[ラビリンス]論⑵ かごめ考|迷宮[ラビリンス]論⑶ ルサンチマン|迷宮[ラビリンス]論⑷ 固有者ブロッホの死|破片録 石原吉郎さんの死|『ジャズ・マガジン』休刊の彼方へ─最後の「季節の迷路から」にかえて
■ジャズの末路[おわり]への考現学
非在へ向かう虚の穴[サックス]
アルト・サウンドの負性⑴ オリヴァー・レイクと身ぶり|アルト・サウンドの負性⑵|アルト・サウンドの負性⑶|アルト・サウンドの負性⑷|声とテクネー/サックス奏法の探究⑴ サックスの本性そして宿命|声とテクネー/サックス奏法の探究⑵ サックスの現前そしてアンビヴァレンツ|声とテクネー/サックス奏法の探究⑶ サックスの奏法と戦略|声とテクネー/サックス演奏における闘い|「非在へ向かう虚の穴[サックス]」後記
排中律ピアノ論/ピアノの解体学
無用の空箱─西洋としてのピアノ|ピアノの解体そして異化|ピアノの権力と強制[なしくずし]|ピアノヘの戦略とその異相⑴|ピアノヘの戦略とその異相⑵|ピアノの光景の此岸⑴|ピアノの光景の此岸⑵
異化のギター/「ジャズの崩壊」症候群
破壊者の肖像─序にかえて|異貌のギター 『受肉』への秘儀|「肉」と「存在」の交錯と「受肉」への闘い|「破砕」と「受肉」─ギタリストの系譜
■非時[ときじく]と廃墟そして鏡
「テロルとトポス」論 ジャズの現[うつし]をめぐる二・三の断片的考察
アルバー卜・アイラーの「サマータイム」をめぐって|フリー・ジャズの思想と音楽の解放|フリー・ジャズの諸相と現在
解体[デソレーション]と再生[リクリエーション] 反語的ロック・メディア論への素描またはロック分野における伝統と異化
未明性としての伝統/伝統〈論〉への視線[まなざし]|ロックとジャズの異相|ロックにおける〈十九世紀〉の復権とクラシック音楽と現代音楽の影、そしてロックの地平[ホリゾント]
チャーリー・パーカーの呪咀と終末論[エスカトロジー] 即興演奏家の宿命としてのバードの存在と影について
時代の未明から来たるべきものヘ ニヒリズムとアナーキズムをめぐるヨーロッパ・フリー・ジャズ・シーンの根底問題について
〈ナルチスの鏡〉の超克と破壊─西洋音楽の最後の冬|ニヒリズムの超克と来たるべきものの在処
■ジャズの〝死滅〟へ向けて 最終稿
ジャズの〝死滅〟へ向けて 最終稿
ジャズの退廃と没落|〈ジャズは死んだか?〉の制度性|アナーキーな地平 デレク・ベイリーの示すもの|ジャズの〝死滅〟の彼方
編集ノート 須川善行
『時代の未明から来たるべきものへ』収録原稿+関連原稿一覧
紹介記事
- Keisuke Kagiwada氏書評(「POPEYE」2016年9月号「JJとAAの勉強」)
- 椹木野衣氏書評(「ケトル」2014年12月号「REVIEW」欄)
- 山崎春美氏×渡邊未帆氏対談(「図書新聞」2014年12月6日号「再考一九七八——いま、間章を読むとはどういうことなのか」)
- 松村正人氏書評(「ele-king」vol.11[2013年9月発行]「失われない言葉」)
- 高野直生氏短評(「intoxicate」102号(2013. 2. 20発行)「O-CHA-NO-MA REVIEW:BOOK」欄)
- ナガタ氏書評(「Book news」2013年02月21日付)
間章(あいだ・あきら)
一九四六年八月十八日、新潟県生まれ。音楽批評家。立教大学中退。在学中より批評・コンサート制作活動を開始。音楽雑誌、新聞、ライナーノートなどに、幅広い教養と独自のレトリックを駆使した文章を発表し、音楽批評にとどまらぬ多方面に大きな影響を与えた。七二年、新潟でフリー・ジャズ、フォーク、ロックから日本の伝統音楽までを網羅する現代音楽祭「自由空間」を開催。その後も、阿部薫、土取利行、近藤等則らとの共同作業や、スティーヴ・レイシー、ミルフォード・グレイヴス、デレク・ベイリーの招聘など、フリー・ジャズ・ミュージシャン、インプロヴァイザーとの実践的なかかわりを深めていった。一九七八年十二月十二日、脳出血により死去。享年三十二。没後に刊行された著書に、本書(イザラ書房版、一九八二年)、『非時と廃墟そして鏡』(深夜叢書社、一九八八年)、『この旅には終りはない』(柏書房、一九九二年)、『僕はランチに出かける』(同、一九九二年)。