『スティグマと差別を超えて――脱施設化と地域ケア』
浅井邦彦 著
17世紀、狂気は俄かに社会から隔離される。今日もなおスティグマ(偏見)と差別は精神障害者を孤立させている。障害者の治療と社会復帰をはじめとする精神保健運動の動態を歴史に沿って世界の視点から明かし、脱施設化と地域ケアの方向を論ずる。哲学的思弁に回収されて、高踏的スティグマを再生産しかねない精神病理学に治療現場から警告し賦活する。
失われた能力をではなく 残された能力を開発して 社会復帰を実現する
1940年千葉県に生まれる。66年東京医科歯科大学医学部卒業、67年同大学神経精神医学教室に入局。この年から浅井病院に勤務、92年浅井病院院長となる。日本精神病院協会常務理事、日本社会精神医学会常任理事など日本の精神医学・医療において指導的役割を果たすばかりでなく、世界精神保健連盟名誉幹事など国際的な活動を行っている。また『分裂病の病院リハビリテーション』『精神科デイケア』『脳と心の調和に向って――新しい精神医療と福祉』など多くの著書がある。
私どもの病院では、中国やカナダ、ニュージーランドなどから留学研究生を受け入れています。つねに世界的視野にたって精神保健のあり方を考えていきたいと願っています。本書の書名となった、統合失調症に対するスティグマと差別をなくすことに全力をあげています。
schizo(-phrenia)論は前世紀のなかば以降、哲学から芸術理論、文化諸科学、はては文芸批評に至るまで広い領域に養分を与えてきた。しかしそのschizo論そのものが、病理学と治療実践に照らして根拠のないもの(誤った議論)であるとしたら! 浅井邦彦の二著の衝撃は巨きい。
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