野矢茂樹 著
私が、変化しながら同一であるとはどういうことか。固有名は、生成の時点から現在に至る四次元連続体を指し示す。一方、認識の変化につれて言語は変り、存在論が変れば言語も変る。同一性は過去を振り返る時に現われる。言語は同一性の残響のもとに変化を立ち現われさせるのだ。変化がなければ時間もない。時間を流れさせるのもまた言語なのだ。
変化するものが どうしてなお 同一でありうるのか 言語は、同一性の残響のもとに 変化を立ち現れさせる。 変化がなければ時間もない。
はじめに ---- 002 第 I 部 同一性・変化・時間 新井篇 ---- 011 数的同一性/質的一性(同一性/同質性・同類性) ピンポン玉モデルと不可識別原理の問題 固有名の指示対象 変化と変化の軌跡 時の流れ 変化の思考と思考の変化・独今論への誘惑 討議 (第T部 同一性・変化・時間[新井篇]) ---- 051 「異質でありながら同一である」 「語り方に依存する」 アイデンティーと固有名 「語ることの変化」 intermezzo ---- 105 ゴキブリになっても野矢は野矢か? (団まりなさんとのやりとり) 第 II 部 同一性・変化・時間 横浜篇 ---- 111 1 はじまり ---- 114 2 時の流れ ---- 121 3 時間は実在しない ---- 151 4 「同一」とされているものは何か ---- 172 5 人物の同一性 ---- 200 6 同一性と言語変化 ---- 225 7 同一性・変化・時間、そして言語 ---- 256 あとがき ---- 281
1954年、東京に生まれる。1985年東京大学大学院博士課程修了。 現在、東京大学大学院総合文化研究科助教授。専攻は、哲学。 主な著書に『論理学』(東京大学出版会)『心と他者』(勁草書房) 『論理トレーニング』『論理トレーニング101題』(いずれも産業図書) 『哲学・航海日誌』(春秋社)『哲学の謎』『無限論の教室』(いずれも講談社現代新書) 『はじめて考える時のように』(PHP研究所)などがあり、他に編・訳書も多い。2002年4月刊の『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』(哲学書房)は、ウィトゲンシュタイン読解の到達点ともいうべき名著として高い評価を得ている。
こんな実生活と縁遠そうな問題で「ウー」とか「ムググ」とか言っている姿は滑稽かもしれない。だけど本人はおおまじめなのである。どうか、たんなる好奇心でけっこう、冷やかしでよろしい、ちょっと足を止めて覗いて見いってくださいな。(「はじめに」より)
ものすごく面白くて、すぐ読める、しかし、考え抜かれた結果だけが書かれているから内容は深い「同一性」論です。世の中に哲学研究者や(ちょっといやな言い方ですが)哲学屋がはびこっていて、人々は彼らのことを、あやまって「哲学者」と思っていますが、こまったことです。野矢茂樹こそは、真の哲学者(哲学する人)です。難解ぶり、韜晦、低廻趣味とは無縁で、誰にでもわかる言葉で真正面から哲学します。
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