名須川 学 著
処女作『音楽提要』から最後の『情念論』までを貫く デカルト形而上学の核心をその生成過程において捉え、 思惟枠を検討して、魂と肉体の解け合わぬ合一に世界 の秩序を見出すに至る思索の動態を描く。 デカルトは協和音を論じて離散量(理性)と連続量(感覚) を統合し、比例論において道徳を変革し、受動と能動の関係から 意志を説いたのであった。
George Hartmannが1526年に製作した金属性アストロラーベ。 アストロラーベというのは、9世紀頃にアラビアで誕生した天文計算機器(星座早見盤)である。 13〜4世紀には天文学者らの必需品として広まり、更に、ルネサンスの名工達が芸術的なものを 競って作り上げた。現在でも現在でもヨーロッパでは装飾品として収集家らの根強い人気を誇っている。 このアストロラーベの構造自体は至って単純なものであり、マーテル (marter) と称される金属盤の凹みに板 (ティンパン) が嵌め込まれ、その上には、高度方位を示すための極めて微細な円弧が数多く描かれており、ここに網 (rete) と称される単純な円[=リング]の組み合わせからなる部品が取り付けられて、これによって恒星の位置を知ることができるようになっている。 デカルトは『音楽提要』第2章第3項において、認識対象の構造把握について論じる際、このアストロラーベ上の幾何学図形を引き合いに出して説明している(本書182頁参照)。
A5版 518頁 定価7,000円(税別) 2002.2.20. 初版発行 ISBN4-88679-076-3
序 第一部 伝統との対決 第一章 悲劇の快 第二章 隠れた質(qualitas occulta) 第三章 ハルモニア 第二部 均衡と意志 第一章 比例から均衡へ 第二章 緊張(intensio) 第三章 注意(attentio) 第三部 人間の根拠 第一章 普遍数学の射程 第二章 世界という書物 第三章 道徳のゆくえ 結論 デカルト的人間学 あるいはムーシカ・フーマーナ 図版 後記
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1964年山形県酒田市に生まれる。1999年筑波大学 大学院博士課程 哲学・思想研究科哲学専攻、博士(文学)学位取得の上修了。 筑波大学 哲学・思想学系 (日本文化研究学際カリキュラム)助手を経て、現在、明治学院大学 一般教育部付属研究所 専任講師。 専門は、デカルトを中心とするヨーロッパ近代思想研究。特に、近代科学や 近代音楽の誕生を支えた比例思想を探求。
私は、デカルトが『音楽提要』の第二章において八つの命題を提示し、ある種の体系的意識に基づいて この著作全体を記しているように見えることに着目した。そしてここから、この八つの命題を流れる 一貫した論理を探り、また、これらがそれ以降の章とどのように関連しあうのかを検討してみた。 その結果、私は、この『提要』の内にある内在的論理を見出すことに成功した・・・。本書はその成果である。
7月6日ルネサンス研究会で、本書の書評会が行われました。 特定質問者三名は、デカルト哲学、美学、科学史の研究者で、 ハルモニア概念をめぐってアリストテレスとの関係、超越的内在の内容について 、象徴主義はどのように乗り越えられたかなどが議論されました。
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