哲学書房 出版目録

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DNAでたどるオサムシの系統と進化

大澤省三蘇智慧井村有希 著

 世界35カ国からもたらされた2000頭、オサムシ亜科を構成する種の9割以上を網羅して、分子統計による系統樹を構築した、一大プロジェクトの研究成果を収める。  新たな分類体系を提唱し、「タイプ・スイッチング」、「静の進化と動の進化」などの概念をうち固めて、進化論の新たな局面を開いた、創見に満ちた書物。分子進化学が、ここに始まった。

【本書の内容から】

進化論を覆します
・同系統から、短期間に「巨頭オサムシ」と「宝石オサムシ」が分かれるなど、不連続 形態変化が起こりうる。
・別系統に、極めてよく似た形態があらわれることがある。(平行進化、収斂)。
・3000万年の間、全く形態変化していない例もある。
・小変化の蓄積が、大きな形態変化を導く、ということはない。

DNAは地史を刻印している
・5000−4000万年前にオサムシは爆発的に多様化する(一斉放散)。インド亜大陸がユーラシアに衝突してヒマラヤが隆起した時期と一致する。

B5版 268頁 上製
オサムシの図、系統樹など
カラー図版多数
定価9,800円(税別)
2002.3.10.
ISBN4-88679-076-3
目次

     まえがき ---------- 7
第1章   オサムシ研究への道のり ---------- 11
第2章   材料の収集と採集紀行 ---------- 17
第3章   分子系統樹 ---------- 29
第4章   オサムシ亜科の系統と分布 ---------- 45
第5章   オサムシ亜科の系統各論 ---------- 55
第6章   分子系統からみたオサムシ亜科の再構成 ---------- 125
第7章   日本列島におけるオサムシ相の成立 ---------- 137
第8章   日本列島のオサムシ各論 ---------- 151
第9章   オサムシ多様化のパターン ---------- 201
第10章   オサムシの系統と分類 ---------- 231
     あとがき ---------- 235
     文献 ---------- 237
     索引 ---------- 243

著者について
大澤省三

1928年に生まれる。名古屋大学理学部を卒業。名古屋大学名誉教授。分子遺伝・分子進化学の第一人者。学士院賞など多くの賞を受賞。

蘇智慧

1963年に中国四川省に生まれる。名古屋大学大学院を卒業。JT生命誌研究館研究員。生化学・分子進化学。遺伝学会奨励賞を受賞。

井村有希

1954年に生まれる。東京慈恵会医科大学医学部を卒業。医学博士。世界のオサムシに関して、わが国を代表する研究者で著書・原著論文多数。

著者のことば

本書は8年間の研究成果のまとめである。当初、日本は言うに及ばず、欧米でも昆虫の分子系統の研究はほとんどなく、四面楚歌だったが、今や昆虫研究の主流のひとつになりつつある。

オサムシの分子系統に関する限り、すべて私たちのオリジナルで、それ以外のものは本書には一切入っていない。

この研究はJT生命誌研究館おさむし研究グループのたゆみない努力の結晶である。ま た、惜しみなく貴重な研究材料を提供され、種々の便宜を与えられた、国内外の友人(ほとんどはアマチュア)の支えの結果である。

[本書より]

書評

「オサムシ、進化論を覆す?」
 昆虫愛好家の協力で4千万年の歩み検証

・・・約四千万年前、一斉に主なグループが分化したようだ。三千万年たっても形の変わらないものもあれば、 ずっと変化のなかった系統から突然形態の変わった品種が出た例もある。 どうやら進化には激しく分化する「動」の時期と「静」の時期があるらしい。・・・

著者のひとり大澤省三が寄稿
日本経済新聞 2002.4.18. 文化 欄


「画期的な研究の集大成」

・・・さらに驚くべきは、形態と系統が必ずしもパラレルでないことを実証したことだ。 たとえばAとBは形がよく似ておりCはまるで違うとしても、系統的にはBとCが近縁で Aだけ遠縁ということはあり得るのだ。・・・

池田清彦(山梨大学教授)
読売新聞 2002.3.31.


[虫と構造改革]
 「下からの」研究、評価を

・・・こうしたことは、近年の進化学でもすでにいわれてきたことである。 しかし「いわれてきた」ことと、それが「証拠で示される」ことでは影響が大いに違う。 だからこの本で示された結果は、生物学の常識に多大な影響を与えるはずである。・・・

養老孟司(東京大学名誉教授・解剖学)
毎日新聞 2002.3.17. 時代の風 欄

書評

「もっとも優れた科学上の業績」
 このオサムシの研究は、わが国で近年もっとも優れた科学上の業績ではないか。なにしろ面白い。

養老孟司(東京大学名誉教授・解剖学)

「分子進化研究のバイブル」
 この待望のオサムシの本は、今やブームになりつつある DNA 分子系統学の原点であり、プロ・アマを問わず分子進化を研究する者のバイブルとなろう。

尾本恵市(東京大学名誉教授・人類遺伝学)

編集者より

おびただしい数の系統樹とオサムシ他の図版の間を縫って本文が流れる部分が頻出し、 デザイン設計と実際の頁作りが難事業で、ほとんどの時間をそれに割かなければなりま せんでした。そして、最後の仕上げは索引で、項目数無慮5000になんなんとする和 名・学名の索引では人海戦術もしばしば機能停止に陥るありさまでした。 刊行にこぎつけることできて、安堵しています。

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